ヒョウモントカゲモドキとインディゴスネークの栄養に関する研究について、文献の報告から
これは文献の報告を、当サイトの判断を加えずに引用したものです。実際の給餌については、かかりつけの獣医師や購入先の店にご相談ください。
ここで引用するのは、特定の種を対象にした少数の研究です。ほかの種に同じことが当てはまるとは書いていません。餌の量・回数・与える時期についての助言でも、必要な栄養の量を示すものでもありません。
ここで引用するのは、栄養について何かを「測った」2 つの研究の報告です。 1 つは、アメリカミズアブの幼虫だけを与えたヒョウモントカゲモドキで、栄養素の消化率とビタミン A・血液の指標を調べたもの(出典1)。 もう 1 つは、飼育下のインディゴスネークで、3 種類の食事とビタミン E・セレン・ビタミン D3 の血中の値を調べたもの(出典2)です。 どちらも「必要な栄養の量」を決めた研究ではありません。当サイトも、必要量や「与えるべき栄養」は書きません。
1. アメリカミズアブの幼虫を食べたヒョウモントカゲモドキ(出典1)
どんな試験か。成体の雄 24 頭(年齢不明、試験開始時の体重は平均 50.7 ± 11.5 g、範囲 31.6〜72.1 g)を 8 頭ずつ 3 群に分け、 約 4 か月(140 日)、アメリカミズアブの幼虫だけを与えました。群の違いは幼虫の下ごしらえです。
- 群 1: ビタミン A を加えた餌で 24 時間飼育した幼虫(そのまま)
- 群 2: 同じ幼虫に、針で 1 回穴を開けたもの
- 群 3(対照): ビタミン A を加えない幼虫(そのまま)
餌の量と回数の条件は、出典 1 の本文を見てください。
幼虫の成分(出典の表の値)
| 乾物 | 粗タンパク質 | 粗脂肪 | 灰分 | カルシウム | リン |
|---|---|---|---|---|---|
| 27.4 ± 0.81 % | 56.1 ± 0.91 % | 23.2 ± 11.78 % | 9.85 ± 0.33 % | 2.14 ± 0.08 % | 1.15 ± 0.03 % |
出典1、Table 1(Average BSF larvae composition)。表は、どの基準(そのままの重さ/乾物)の値かを明記していません。
栄養素の見かけの消化率
糞を、試験の最初の月と最後の月に集めて分析し、食べた量と出した量から見かけの消化率を計算しています。 3 群のあいだで、どの栄養素にも有意な差は検出されませんでした(群あたり 2 試料のため、差がないことを示すものではありません)。下は 3 群を合わせた平均です。
| 栄養素 | 消化率(%、平均 ± 標準偏差) |
|---|---|
| 乾物 | 71 ± 4.7 |
| 粗タンパク質 | 81 ± 2.0 |
| カルシウム | 43 ± 9.5 |
| リン | 45 ± 5.8 |
| マグネシウム | 51 ± 5.0 |
| カリウム | 79 ± 2.7 |
| ナトリウム | 48 ± 48 |
| 銅 | 30 ± 4.6 |
| 鉄 | 59 ± 2.9 |
| モリブデン | 49 ± 7.2 |
| 亜鉛 | 40 ± 3.8 |
出典1、Table 2(n = 6 試料。糞は最初と最後の 1 か月ぶんを月ごと・群ごとにまとめた試料)。 ナトリウムは、群 3 のまとめ値が 17 ± 90.9 という大きなばらつきで(負の消化率が群 3 の 1 試料で見られたと出典は書いています)、平均 ± 標準偏差が 48 ± 48 です。 カルシウムの消化率が低かったことについて、著者らは、咀嚼や針の穴あけでは外骨格が十分に壊れず、カルシウムを多く含む外骨格が消化されないという仮説を立て、 外骨格が完全な形のまま糞に出てくることが多かったことが、この仮説を支えると述べています(著者の目視の観察)。著者らは別の可能性として、成体では吸収を抑える調節がはたらいたことにも触れています。
ビタミン A(試験の終わり近くの値)
| ビタミン A を加えた幼虫の群(群 1・2) | 加えない群(群 3) | 有意差 | |
|---|---|---|---|
| 血漿レチノール(ng/ml) | 33.38 ± 7.11(n = 8) | 25.80 ± 6.72(n = 5) | あり(P = 0.0415) |
| 肝臓の総ビタミン A(μg/g) | 28.67 ± 18.90(n = 16) | 14.13 ± 7.41(n = 7) | あり(P = 0.0325) |
出典1、Table 3。血漿は 105 日目と 140 日目の値を合わせたもの、群 1 と群 2 は合算で、検定は片側の t 検定(独立 2 群)です。血漿は、24 試料のうち測定の下限を超えたのが 13 試料だけでした。 試験開始時の血漿の値は、すべて測定の下限(50 ng/ml)未満でした。 肝臓は、対照群の 1 頭の値(61.35 μg/g)を外れ値として除いています。 著者らは、個体ごとの試験開始時の肝臓の値がないため、ビタミン A の状態が「変わった」かどうかは評価できない、と書いています。
健康状態と血液の値
- 24 頭のうち 10 頭(41.6%)が体重を減らし(平均 −13.76 ± 7.71%、範囲 −0.14〜−23.91%)、 そのうち 7 頭(29.2%)は、食欲不振と体重減少が強く、途中で試験から外されました(群 1 が 3 頭、群 2 が 2 頭、群 3 が 2 頭)。
- 試験から外された個体の解剖では、口内炎(4 頭)、肝臓の脂肪の蓄積・空胞(4 頭)、クリプトスポリジウムの感染(3 頭)、 リンパ球・形質細胞性の腸炎(3 頭)、腎尿細管の壊死(2 頭)、肺の黄色腫症(1 頭)が報告されています。 ビタミン A 不足に伴う上皮の変化(扁平上皮化生)は、解剖した個体のいずれにも見られませんでした。
- 血液の生化学値では、試験の開始前の値と 35 日目の値の比較で、カルシウム・総タンパク質・アルブミン・グロブリン・ナトリウムが有意に低下しました (カルシウム 14.2 ± 1.1 → 13.0 ± 1.1 mg/dL、総タンパク質 5.9 ± 0.9 → 5.1 ± 0.7 g/dL、 ナトリウム 147.8 ± 5.8 → 138.8 ± 3.1 mmol/L、いずれも P < 0.001)。群の間には差がありませんでした。
- この試験は、3 群とも幼虫だけを与えており、幼虫以外の餌の群は含まれていません。 出典1は、血液の値の変化(たとえばカルシウムの低下)について、原因を断定せず、複数の可能性を挙げています (カルシウムの消化率の低さ、ビタミン D の低さ、試験の前に高いカルシウムの補給を受けていた個体の値が戻った可能性など)。
著者らは、カエルを使った先行研究と比べて多くの栄養素で消化率が高かったが、カルシウムは約 43% と低いままだった、と述べています。 また、ビタミン A を含ませない群より、含ませた群で血漿・肝臓の値が高かったと報告しています。また、この結果だけでは、カルシウムの補給が必要かどうかは言えないとも書いています。
2. 飼育下のインディゴスネークと 3 種類の食事(出典2)
どんな試験か。米国フロリダ州の保全施設で飼育下繁殖された成体 9 頭(雄 3・雌 6、4〜7 歳)を、3 群(各 雄 1・雌 2)に分けました。
- 丸ごとの餌の群(げっ歯類・鳥・カエルの脚などの混合)
- 基本のソーセージの群(丸ごとの餌の構成の割合を再現して、ケーシングに詰めたもの)
- 試験用ソーセージの群(野外のインディゴスネークの胃の中から見つかった餌の平均的な栄養の組成に合わせて設計した、 高タンパク・低脂肪のソーセージ。豚ロース・ウサギ・ワニの肉に、サプリメントを加えたもの)
出典2は、サンプルが小さいため、正式な統計解析は行わず記述統計だけで読み、結果を「パイロット研究」として読むよう求めています。 飼育者は、ソーセージを食べた個体について、体型(body condition)・排便・行動の異常を報告しませんでした。 なお、試験の間に 1 頭(群の記載なし)が、採血の訪問の 2 日後に死亡したと出典2は書いています。病理では原因を特定できず、著者らは鎮静薬の影響の可能性に触れています。
血中の値(結果の要点)
- 出典2は、群のあいだに有意な差は観察されなかったと書いています (ただし、上のとおり、正式な統計解析は行っていないと断っています)。
- ビタミン E(血漿)は、出典が比べた野外個体の値(最大 0.0365 mg/mL)の範囲内か、それを上回っていました(野外個体との比較で、必要量の基準ではありません)。 出典2は、試験の途中でビタミン E の注射(雌の産卵に向けた調整の一環)が行われ、その後に高い値になったと書いています。
- セレン(血漿)は 3 群で近い値で、冬と春に低めでした。夏は、出典のいう「両方の丸ごとの餌の群」(3 群しかなく、指す群は出典に明記がありません)で高い値が見られましたが、 試験用ソーセージの群では同じ上昇が見られませんでした。
- ビタミン D3(血漿)は、「野外個体と飼育個体の最も明らかな食い違い」だと出典2は書いています。 出典が挙げる最小値(46 ng/mL。文脈上は野外個体との比較で、必要量の基準ではありません)を超えたのは、9 頭のうち 2 頭だけでした(64.1 と 60.9 ng/mL)。 この 2 頭は、採血の前に屋外の飼育場にいました。出典2は、すべてのヘビについて、夏の平均値が食事の試験の開始前の値より低かったとも書いています。
出典2は、ヘビのビタミン D3 の状態を理解するために、フルスペクトルの照明など紫外線の与え方を標準化するなど、さらに研究が必要だと述べています。
読むときの注意
- 出典1は、成体の雄 24 頭の試験で、幼虫だけを約 4 か月与えたものです。幼体・雌・ほかの餌・ほかの種については、ここでは何も書いていません。 また、3 群とも幼虫だけなので、ふだんの飼育(複数の餌を組み合わせる)の結果ではありません。
- 出典1の消化率は、糞を群ごと・月ごとにまとめた少数の試料(n = 6)から出した値です。ばらつきが大きいものがあります。
- 出典2は 9 頭のパイロット研究で、保全のために飼育されている成体の、ヘビなども食べる種です。 飼育環境(屋内外の移動、季節による管理)も試験の間に変わっています。ペットとして飼われるほかのヘビに当てはめるものではありません。
- このページは、測られた値の紹介です。
出典
- Boykin, K.L., Carter, R.T., Butler-Perez, K., Buck, C.Q., ほか 3 名, & Mitchell, M.A. (2020). Digestibility of black soldier fly larvae (Hermetia illucens) fed to leopard geckos (Eublepharis macularius). PLOS ONE, 15(5), e0232496. (DOI: 10.1371/journal.pone.0232496、ライセンス: CC BY 4.0、2026-10-04 確認。 PMC7213736 を取得。Crossref の license(vor)も同じ。)
- Jackson, P.R., Bogan, J.E., Dierenfeld, E.S., & Loughman, Z.J. (2024). Evaluation of Nutritional and Health Status in Captive Eastern Indigo Snakes (Drymarchon couperi) in Response to Formulated Sausage Diet. Animals, 14(22), 3324. (DOI: 10.3390/ani14223324、ライセンス: CC BY 4.0、2026-10-04 確認。 PMC11591334 を取得。Crossref の license(vor)も同じ。)
上の数値・記述は出典の報告そのものであり、当サイトが測ったものではありません。